こんにちは、凸森です。
今回は様々なアニメ企画を今まで生み出してきた、
ANIPLEXについて取り上げていきたいと思います。
近年打ち出してきた新企画から、
ANIPLEXの考える課題と戦略が読み取れ、
かつそれらは他のアニメ関連会社も同様に考えなければない問題だと思い、
今回の記事でまとめてみたいと思ってます。
アニプレックスの新ブランドレーベル「ANIPLEX.EXE.」とは?
昨年の12月26日、ANIPLEXは新しいブランドレーベルを立ち上げました。
その名は「ANIPLEX.EXE(アニプレックスエグゼ)」

これは、今までANIPLEXが大ヒットをたたき出していた
- 「Fate/Grand Order」(以下:FGO)
- 「マギアレコード」(以下:マギレコ)
などのアプリゲームではなく、美少女ノベルゲームのブランドレーベルです。
スマホでのアプリゲームの新ブランドではなく、
PCブラウザ用のノベルゲームの新ブランドを
日本のアニメ界をリードする会社の一つであるANIPLEXが
このタイミングで立ち上げたのは、少し驚きました。

なぜ今絶叫調であるスマホでのアプリゲームではなく、
時代に逆行するかのようにPCブラウザ用のノベルゲーム
の新ブランドを…
しかし一見この理にかなっていないように見えるANIPLEXの選択も、
様々な角度からALIPLEXという会社を見てみると、
これはアニメ版権ライセンスをビジネスとしている会社としては
将来も見据えた非常に戦略的な動き
であることがわかります。
どういうことでしょうか?
アニプレックスの大ヒットアプリゲーム「Fate/Grand Order」
2015年7月30日、
ANIPLEXは社運を掛けたひとつのアプリゲームをリリースします。
それが「Fate/Grand Order」(以下FGO)です。
オリジナル(原作)は2004年に発売された
ビジュアルノベルPCゲーム「Fate/stay night」(以下stay night)で、
「FGO」は「stay night」のキャラクターが登場する
ターン制コマンドバトルアプリゲームです。
このゲームはANIPLEXに多大なる利益をもたらしました。
「FGO」リリース前は約40~50億円の純利益で推移していたのですが、
「FGO」リリース後の2017年にはその3倍となる純利益約150億円、
さらに2018年にはそのさらに倍の純利益約300億
という驚異的な数字をたたき出しました…!!

この増収はハッキリ言って異常とも言えるほど、驚異的です。

リリース前に比べて約6倍以上の純利益…!すごい!!
「FGO」の開発フローとお金の流れ
ここで「FGO」が
どのような開発フローで、
どのようなお金の流れをしているか考えていきたいと思います。
筆者の推測の部分もありますので、
理解のための参考までに留めておいていただけると幸いです。
「FGO」の関係性と開発フロー
まずは以下の図より「FGO」の関係性と開発フローについて考えていきたいと思います。
まずここでわかるのは
ANIPLEXがノーツ(TYPE-MOON)から”Fateシリーズ”という原作使うために
原作使用契約を結んでいることです。
この契約によって、ANIPLEXは原作者からの公認で
“Fateシリーズ”のアニメやゲームの製作する権利を許諾されています。
しかし、アニプレックスはゲーム開発会社ではありません。
そこでアニプレックスは原作使用契約に基づき、
ゲーム開発会社のDELiGHTWORKS社に
“Fateシリーズ”のゲームを開発する権利をライセンスします。
その契約に基づいてDELiGHTWORKSは”Fateシリーズ”のゲームを開発していきます。
その開発過程の中で、DELiGHTWORKSは
「開発中のゲームが原作の世界観にちゃんと沿っているか?」「不備はないか?」
をANIPLEXに確認させるために監修物を提出します。
ANIPLEXもそれを確認しますが、
それは原作側であるノーツにも確認を取る必要があります。
そこでノーツとANIPLEXは定例監修会を開き、
DELiGHTWORKS側の提出した監修物を一緒に確認して、
修正が必要個所などを確認していきます。

監修会については、以前に投稿された以下の記事でもう少し詳しく説明されておりますので、もしよろしければ参考にしてくださいね。

「FGO」のお金の流れ
次に以下の図より「FGO」のお金の流れについて考えていきたいと思います。
「FGO」の収益は主にユーザーによるガチャの課金です。
その収益は「FGO」を運営しているANIPLEXに入ります。
しかし、その全額がすべてANIPLEXに入るわけではありません。
まず、原作側であるノーツに原作使用料を支払う必要があります。
この使用料は原作使用契約に基づいたものとなります。
使用料のパーセンテージについては、
ノーツとANIPLEXの交渉の元で取り決められるものですが、
ネットで調べてみると、
大体GROSS収入の30~40%くらいであるかなと予想されていました。
また、ゲーム開発側であるDELiGHTWORKSにも
開発協力費的な名目で収益を配分する必要があります。
ネットで調べたところ、大体NET収入の10~20%のようです。
ちなみに図にも注釈を入れましたが、
GROSS収入とNET収入とは、簡単に言うと以下のようなものです。
■NET収入=諸経費控除後の利益

他にも、関係各所への配分や諸々の諸経費とかが売上から引かれます。
そのすべて引かれた上で手元に残った金額がANIPLEXの純利益となります。
そのANIPLEXの純利益が、
リリースからわずか数年で6倍以上になるという結果となりました。

まさに大成功!という感じだね。
この調子だったらANIPLEXは一生安泰だね。

もちろん大成功とは言っていいんだけど、
「ここで安心してはいけない!」とANIPLEXは考えてると思います。

えっ?どうして?
「FGO」は”もろ刃の剣”?
「FGO」はANIPLEXに大きな利益と成功体験を与えてくれました。
しかし、この「FGO」という”約束された勝利の剣”であると同時に、
“もろ刃の剣”でもあるのです。
どうしてそういえるのでしょうか?
「FGO」への依存と不安定な流行
正直に言って、今のANIPLEXの収益は半分以上「FGO」頼りの状態だと思います。
これは、IPコンテンツすべてに言えることですが、
「IP=流行」です。
流行というのは、時流に乗っているときは大きな利益をもたらしますが、
いつその流行が終わるのかは、誰にもわかりません。
「アニメは水物」とよく言われてます。
インフラ系や生活必需品を取り扱う会社であれば、
いつの時代もある程度需要がありますが、
アニメは流行が終わればすぐに収益ゼロになる可能性を常に秘めております。

確かに、アニメとかゲームって長く続いてる作品って本当に一握りのタイトルだけだもんね…
原作監修の負担
前の項の「開発フロー」の中で、原作への監修についてお話ししましたが、
これは版元にとっては相当の負担だと言っていいです。
もちろん、原作側の監修ハードルというの作品によってことなり、
すごく緩い作品もあれば、すごく厳しい作品もあり、千差万別です。
こと「FGO」に関しては、一度プレイしてみるとわかりますが、
シナリオやキャラのアレンジなどがかなり自由度が高く、
監修のハードルは低いような気がします。
それでも、
外部会社に原作があるのと、
自社で原作を持っているのでは、
監修のカロリーに雲泥の差があると言って間違いないです。

ここで私がこの記事で言いたかった答えが既に出ちゃってますが、
次の項で詳しく説明していきますね。
「ANIPLEX.EXE.」に見えるアニプレックスの狙い
「ANIPLEX.EXE.」を立ち上げたことでANIPLEXは何をしたいのでしょうか?
一言で言うと、
自分たちが原作になりたい
ということに尽きると思います。
そうすることで、以下のメリットが生まれます。
■原作側との原作使用契約書を結ぶフローの省略
■原作側との監修会を開く必要がなく、監修を社内で完結可能
■原作側が「作品の展開を止めます」等の不安要素を除外
■原作側の承認を得ることなく、自由にアニメ化・商品化等のメディアミックス展開可能
■原作側に原作使用料を支払う必要がなく、ヒットした際の利益率が大きい
さらに一番大きいのが、
自分たちが面白いと思う作品を自分たちの手で生み出せる
ということです。

このように、ANIPLEXは10年~20年後の将来を考えたときに、
「原作の力を借りた作品作りだけではなく、
自分たちがオリジナルで面白いものを生み出していきたい」
というという気持ちが「ANIPLEX.EXE.」には表れていると思います。

なるほどねぇ。
まとめ
本日のポイントを以下にまとめます。
ANIPLEXは…
①近年「ANIPLEX.EXE.」という美少女ノベルゲームのブランドレーベルを創設
②近年「FGO」で大きな利益を得ているが、その収益に依存している
③「FGO」への依存を危惧し、それを脱却する策が必要だと考える
④「ANIPLEX.EXE.」によって、自分たちが原作として運用できるコンテンツを増やしていき、「FGO」依存の打開を目指している

最後まで読んでくださってありがとうございます。
ANIPLEXへの就活・転職を考えている方は、
上記の情報も企業研究の参考にしてみてください。
また、このような課題は他のアニメ会社も似たような形で抱えているので、ANIPLEX以外のアニメ会社を受けようとしている方々も、
参考にしていただければと思います。

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