こんにちは、凸森です。
今回はアニメの制作進行のお仕事内容について紹介していきます。
私自身、2年間ほど某アニメ制作会社で制作進行として働いておりまして、その時の経験を交えて読者の皆様にわかりやすくご紹介できればと思います。
アニメの制作進行って、何をする仕事?

アニメの制作進行って、文字面だけだと何をする仕事かイメージしづらいんだけど、凸森くんは制作進行として働いているとき、どんなことしてたの?

そうだなぁ…
一言でいうと、“アニメの話数単位の中間管理職”という感じです。

ふむふむ…具体的にはどんなことをするの?

すごーく簡単にいうと、以下の4点に尽きると思います。
②素材のスケジュール管理(各セクションのUP日設定、CT/DB/V編)
③素材状況確認(発注先への電話・メール連絡)
④素材の回収・運搬

ここで言われてる”素材”って?

ここで言う”素材”とは、原画が主です。
その他、美術背景や3Dなどもありますが、やはり原画がメインとなります。

なるほどねー。
じゃあ、原画の発注・そのための打合せ・原画のスケジュール管理
がメインとなってくるんだね。

その理解でOKです!
じゃあ、さっき挙げた6点についてもう少し詳しく説明していくね。
アニメに必要な素材発注と打合せ
原画発注
作画打ち(作打ち)

まず、制作会社に入って、アニメの1話数を担当を任されたときに渡されるのは絵コンテです。

面白い絵だね(笑)

僕のほうで即席で描きました…
また、場合にもよりますが、コンテができた段階でこの話数のアニメ演出さんも決まっております。なので、このコンテのラフな絵から原画を描いてくれるアニメーターに仕事を発注する必要があります。このアニメーターとアニメ演出間で行われる打ち合わせを作画打ち(作打ち)と言います。

なるほどね。
でも、制作進行さんがアニメーターさんに直接説明するだけじゃだめなの?

もちろん、アニメーターへの最初のご相談と打合せのスケジュール組みは制作進行側で行います。しかし、アニメーターは「このシーンはどういう芝居が必要か?また、セリフのテンションは?」などは、コンテからもわからなくはないですが正確にはわかりません。なのでアニメーターと演出とで「シーンの演出プランのすり合わせ」が必要なのです。

なるほどね。
ちなみに、1話につきどれくらいこの作打ちをする必要があるの?

これはスケジュールにもよるんですが、1コンテ=約200~300カットあって、アニメーター1人につき大体10~30カットを担当します。
ですので、平均して10~20人のアニメーターと作打ちする必要があります!

じゃあ、これだけで結構な数の打合せが必要なんだね…
作画監督打ち(作監打ち)

これに加えて、作画監督打ち(作監打ち)も必要になってきます!
アニメ1話=作画監督1人というのが理想ですが、昨今のアニメではスケジュールの関係で大体作画監督は2~5人を立てることが多いので、作画監督とも演出と打合せをする必要があり、そのブッキングも制作進行の仕事です!
(スケジュールがない場合は作画監督が10人…)
打合せ内容は、基本的に作打ちと同じような感じです。

なるほどねー
総作画監督打ち(総作監打ち)

さらに、ネットが普及した昨今では「作画崩壊」や「キャラの顔がいつもと少し違う」等でファンが騒いで炎上してしまうケースが増えており、それを極力防ぐために最近では作画監督のさらに上に”総作画監督(総作監)”というポストを立てており、キャラクターの作画を全話数を通して統一させる流れになっております。もちろん、それに合わせて総作監打ちも必要になります

さらに打ち合わせが…
美術発注(原図、美術打ち)

アニメーターはレイアウト(=清書の前段階)で背景+キャラを描いてくれますが、清書時はキャラのみとなります。背景については、美術がやってくれます。

ん?ちょっとよくわからない…

事項で美術への背景発注フローを説明するね。
原図

アニメに使われる背景(=BG)の下描き段階のものは、アニメーターさんが描いてくれます。その時、発注先の美術会社に提供するものが原図と呼ばれてます。

具体的には、どのようなものを提出するの?

具体的には、作画監督チェック済みのレイアウトのBG+キャラのスキャンをフォトショップデータ(=PSD)でまとめたものをいいます。これを作るのが、意外とめんどくさい…

そんなに作るの難しいの?

いや、作ること自体は簡単なんですけど、、これが忙しいときにやれと言われるのが大変で、、さらに50~100カット分を一気に作らないといけないときもあって、そうなるとこれで4~5時間くらいの作業時間が必要なんですよね…

あぁ…忙しさと物量の問題ね…

僕も、制作進行になり始めのことは、「これくらいすぐできるから、今度やろう!」と原図作りを怠っていたら、いざ必要になったときに他のことですごく忙しくなり、原図作りの時間が取れず深夜から朝まで原図作りしたことがあります。。
ですので、原図は作れるときに作ってしまう!!
もし、読者の中で制作進行を目指している方がいらっしゃいましたら、これは是非肝に銘じておいてください!!

はい!先生!!
美術打ち

原図が全カット分そろったところで、美術側と演出は美術打ちをする必要があります。打ち合わせの場で原図を確認して、シーンごとの背景について確認します。

例えば、どんなことを確認するの?

色々あるんですが、主に以下のようなことを確認します。
・このシーンは朝 or 昼 or 夕方 or 夜?
・光源はどこか?
・美術側で描く素材とアニメーター側が描く素材で重なる部分はあるか?(=BG組み)

あぁ、そっか!
アニメといえども光がどこから入るのか確認する必要があるんだ!

そうなんです!実写と同じようにアニメにおいても光源はとても大事なんです!
撮影発注

原画関連・背景関連と、大きな打合せを終えて、最後に撮影の発注とそのための打合せが必要となります。

そもそもなんだけど、アニメの撮影ってどういうことなのか、
いまいちピンとこないんだよね…

ここまで話してきたアニメの素材(原画・背景など)って、いくら上手にきれいに描かれたとしても、そのままだと単なる一枚一枚の絵がデータとしてあるだけで、映像にはならないんです。
なんで、撮影がそのデータを一枚一枚をタイムシートに書かれた指示通りに繋ぎ合わせて”映像”の形にするんです。

なるほどね。撮影という言葉で「?」になってしまうけど、要するにアニメの映像を作る人なんだね。

今は主にAdobeのAfter Effectというアプリケーションを使ってデータで作業しているけど、昔は「撮影台」を使って、アニメの原画を一枚一枚文字通り撮影していたんだ。

大きい機械だね!
ちなみに、撮影さんとの打合せって、いったい何を話すの?

主に撮影効果・エフェクトについて撮影監督と演出とですり合わせることになるね。昨今のアニメは、もちろん作画や背景も重要であることはさることながら、なんと言っても撮影でどれだけ撮影効果・エフェクトを盛り込めるかでアニメの出来の良しあしを左右するといっても過言ではないです。

え!そうなの!?

そうなんですよ。例えば、最近だとufotable制作の『鬼滅の刃』だったり、京都アニメーション制作の『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』だったりは、高い作画クオリティもさることながら、その高い作画クオリティを最大限にフィルムに現れるようにしている撮影の力もとても大きいんだ。

へぇー、そうなんだね。
それだったら、全部の会社が撮影に力を注ぎこめば、すべてのアニメのクオリティが高くなるんじゃないかな?

それが理想なんだけど、いかんせんスケジュールの関係で撮影にそこまでの時間と力を費やせないことが多いんだ。。

そっか…それは仕方ないよね…
素材のスケジュール管理

ハッキリ言って、制作進行にとってスケジュール管理こそがすべてだといっていいです!

おおっ!言い切ったね!

例えば、納品(V編)までの制作期間が3か月のアニメ制作の場合、制作進行はV編から逆算して各セクションの〆切を設定します。僕のほうで以下のようなスケジュール表の例を作ったので、ご覧になられたい方は以下クリックしてください↓

おお!これ凸森くん作ったんだ!すごいね!!
ちなみに、V編はわかるんだけど、CTとDBってなにかな?

CTとDBはアニメの制作進行にとって把握すべき大事なイベントですので、以下に詳しく説明しますね。
・アフレコ(=AR)を行う前に、一度現状の素材(コンテやレイアウトの段階で)を撮影して1本に繋げて、尺決めをする編集作業
・素のままだと尺が長いため、編集でカットやシーンを削る
・CTが完了した映像を元にARを行う
・CTに参加するのは編集、演出、制作進行
・CTの際、タイムシートの変更等の作業が発生するため、制作進行は必ずタイムシートのコピーを持っていく
・アニメの映像に効果音やBGMをつける作業
・DBは足跡などの細かい音をつける作業なのでできるだけ本納品に近い状態(=オールカラー)の映像を用意することが理想
・しかしスケジュールの関係上、レイアウトの状態でDBすることもある
・DBに参加するのは音響監督、演出、制作進行
・DBの前に、DB用の映像素材の確認+効果音についての指示を映像に打ち込むために「マーキング」という作業を編集、演出、制作進行の立ち合いのもと行う
・マーキングの際、タイムシートの変更等の作業が発生する可能性があるため、制作進行は必ずタイムシートのコピーを持っていく

どちらも音響に関わっていることなんだね。
ちなみに、「制作進行は必ずタイムシートのコピーを持っていく」ってところ、どうしてアンダーラインしてるの?

それは、僕が新人の制作進行だったころ、DB前のマーキングという作業のタイムシートのコピーを忘れてしまい、演出さんに迷惑をかけたことがあるからです。。

あらら…それで、その時はどうしたの?

なんと、その演出さんは自分の頭の中で全カットのタイムシートを記憶していて、タイムシートなしで編集さんに指示していたんだ…!!

え!?そんなことできるの!?!?

あの時が一番、「アニメの演出家って、すごい!!!」って思った瞬間だったよ。もちろん、あとですごい怒られたけど…

…ドンマイ

最後に、制作進行にとってCT用映像素材とDB映像素材を用意することが山場の一つとなります。特に、DBでは”オールカラー”を条件にしている制作会社もあり、DBにアニメ映像に色を付けるためにすごく忙しくなることが多いです。
素材状況確認(発注先への電話・メール連絡)

これは基本的にアニメーターへの原画進捗状況がメインの話です。

どうして?

特に、原画がスケジュール通りに上がらないんですよ…

あらら…じゃあそれを催促するために、連絡を入れるんだね。

そうですね。ただ、むやみに催促しすぎるもの、よくない場合があります。アニメーターさんによっては、電話をかけられすぎることを嫌がる人がいますからね。。ですので、基本は1日1回の電話、留守だったとしても多くて2~3回かけたのちにメッセージで残すというのがいいかなと。

そうだね!何事も、適切さが大切だね
素材の回収・運搬

例えば、アニメーターに電話して「今日原画上がりありますよ」と言われた場合は、原画を車で回収していきます。主に、夜の10時~12時ごろから制作進行は回収車を走らせることが多いです。

え!?どうしてそんな遅い時間から?

大体のアニメーターがその日の作業を終えられるのがこれくらいの深夜時間帯だからです。もちろん、人によっては朝から作業して6時に作業終える人もいますし、また、夜型の人も多くて上がりが出るのが朝5~7時、という人も多いです。

これは大変そうだね…

確かにつらい部分ももちろんあるけど、僕は制作進行をやってて回収の仕事が一番楽しかったと思うよ!

え!?どういうところが楽しかった?

こんなところが僕の楽しかったポイントだよ↓
・単純に真夜中に車を運転することが楽しい
・深夜ラジオを聴きながら運転する楽しみ
・たまに回収の途中にラーメンを食べる

あ!凸森くんがよく深夜ラジオ聞いてるのって、ひょっとして回収の時に車の中でよく聞いてたからなんだ!?

そうなんだよね(笑)
でも、今は大手の会社だと制作進行に車の運転はさせず、アニメ素材の運搬・回収を専門としている会社に委託しているところも出てきている。

うんうん、それはいいことだね。

うん、制作進行が夜回収に行かなくて済むってことは、それだけ早く家に帰られてとても良いことだと思う。でも、ちょっとだけ悲しさもある…
まとめ

今回はとても長くなってしまいました..!!以下まとめますね。
・アニメを制作するにあたり、制作進行が素材発注・依頼をする必要があり、また打合せをする必要がある(作画打ち、美術打ち、撮影打ちetc…)
・制作進行はV編から逆算して各セクションの〆切を設定し、スケジュール管理をする。
・制作進行は音響用の映像素材(AR/DB)を用意する必要があり、そのためのCTやマーキングに向けて準備をする。
・制作進行は素材の進捗状況を定期的に確認し、素材が上がったら回収に向かう。

今回はいつもより倍のボリュームだったよね…お疲れさま!

みーちゃんもお疲れね!
でもこの記事、最初に話そうと思っていたことの半分くらいしか話せてないんだよね…

えっ…そうだったんだ…

なので、今回の記事は「アニメ制作進行のお仕事内容の基本中の基本」に的を絞って話してます!「アニメ制作進行の一日のタイムスケジュール」とか、「凸森のアニメ制作進行をしていてつらかったこととベスト5」などのトピックスは、また次の機会に記事にしようと思ってますので、乞うご期待ください!

つらかったことベスト5、気になる(笑)楽しみにしてるねー^^
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